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Fri.

舞い降りた春風(MITSUI)

それは、いつもと変わらぬ朝だった。
オレ(MITSUI)は、ホームにたたずみ、電車が来るのを待っていた。

見なれた風貌のサラリーマンが二人、覇気のない顔でオレの前に並んでいる。
少し遠くでは、女子高生の集団が、明るい声を弾ませながら改札の方へと流れて行く。
そう、それは、いつもと何ら変わらぬ光景だった。

もうあと5分もすれば、いつもの電車が到着する。
オレは、何を考えるでもなく、線路の向こうに広がる景色を、ただボンヤリと眺めていた。

っと、その時だった。
オレの視界の片隅に、人影が近づいてくるのが写った。

何気なくそちらに目をやると、確かにOL風の女性が一人、オレの方に向かって歩いてくるのが分った。
見れば、ここ数日、何度かこのホームで見かけたことがある人だ。
大人の清楚な佇まいを持ち、同時にその横顔にホンノリと幼さを残す、そんな魅力的な女性だった。

それにしても、確かにオレの方に向かって歩いて来ている。
しかも、その視線は、明らかにオレに向けられている。
「いや。」 オレは、慌ててカブリを振った。

『ふふっ、何をまたバカなことを考えてるんだオレは。そんなこと、あるはずないじゃないか。
ついこの前だって、向いのホームから女の子が見ていると勘違いし、手まで振って大恥をかいたばかりじゃないか。』

オレは、そっと目を閉じると、あまりにも馬鹿げた妄想をしている自分自信の愚かさに苦笑した。
しかし、再度目を開けたオレは、その瞬間、ハッキリと、それが妄想でないと確信した。
そうなのだ。やはりどう見ても、その人はオレの方に近付いてきているのだ。
しかも、何やらモジモジとした恥ずかしげな態度で、明らかにオレを意識しているのが見てとれた。

『おいおい、なんだよ。どういうことだよ。まさかオレに気・・・んなことあるわけねえよな。もう騙されねえぞ。オレは、騙されねえぞ~!』

しかし、次の瞬間、オレの勘ぐりはイイ意味で覆えされた。
すぐソバまで近付いてきた彼女は、少し緊張した面持ちで顔をこわばらせながら、オレに言葉をかけてきたのだ。

「あっ、あの~、すっ、すいません。」

あまりの出来事に、オレは、動揺を隠せないでいた。

「あっ、はっ、はい。 なっ、なんでしょうか。」

シドロモドロになりながらもオレが返事を返すと、彼女の、その愛らしい唇から、なんとも麗しいセリフが発っせられた。

「あの~、わたし、毎朝このホームで見てたんですけど、わたしのことなんて、しっ、知らないですよね。」

「いっ、いえ、しっ、知ってますよ。毎朝この時間にご出勤されてますよね。」

「えっ、ほっ、ほんとですか。うれしい~。知っててくれたなんて、感激です。」

「いえ、そっ、そんな、感激だなんて。っで、あの~、それで、僕になにか?」

「はい、あの~、突然ですいませんが。こっ、これ、もらっていただけないかなって思って。」

彼女は、持っていた自分のバックから、綺麗にラッピングされた小箱を一つ取り出した。

「あの~、すっ、すいません。もうすぐバレンタインですよね。
今度の14日は日曜日なので、お渡しできないと思って。だから、それで、今日、こっ、これ・・・なんですけど。」

「えっ?」

オレは、今ここで、いったい何が起こっているのか理解できずにいた。

「まっ、まさか。かっ、からかっていらっしゃるんじゃないですか。」

「えっ? そっ、そんな、そんなこと。
わっ、わたし、前からずっとあなたのこと見てて・・・そっ、それで、あの・・・これ、わたしの気持ちなんですけど、アレ、何言ってんだろ、アタシ。」

ああ、これが夢なら永遠に覚めないでほしい。オレは神に祈った。

「そっ、そんな。ボッ、ボク、信じられないですよ。でっ、でも、本当なら、ものすごい嬉しいですけど。」

「もちろん本当です。本当の気持ちです。信じてください。」

「わっ、分かりました。しっ、信じます。信じますとも。それにアナタだったら騙されたっていいし、ハハッ。」

「えっ? そっ、それって、いい意味に受け取っていいのかな?
でも、騙してなんてないですからね。フフフフッ。」

「ウソウソ、冗談ですよ。騙してるなんて思ってないって。ほんと、素直に嬉しいです。
それに、ボクも、ちょっと素敵な人だなあ、なんて思ってましたし。」

心臓が爆発しそうなわりには、オレってウマイと思った。

「えっ、ほっ、本当ですか? わっ、わたしこそ信じていいのかな。でも、ウレシイです。」

そう言いながら、彼女は、差し出した小箱をグイッとオレの胸に押し付けた。
オレがその箱を受け取ると、彼女は、ペコっと可愛くおじぎをした。

しかし、考えてみれば、オレは妻も子もある身の上である。
簡単に、これを受け取ってしまったら、かえって彼女を傷つけてしまうことになるのではないか。
そう考えたオレは、心を鬼にすることにした。

「ありがとう、っで、でも、実は、オレには・・・・。」

そう言いかけた時、オレの言葉を彼女が遮った。

「いいんです。けっして迷惑かけたりしませんから。こうして、毎朝会えるだけでいいんです。
でも、たまでいいですから、おしゃべりしてくださいね。それだけでいいですから。」

彼女は、もう一度頭を下げると、恥ずかしそうに笑いながら、足早に改札の方へと走り去っていった。

「あっ、あの・・・」

その時のオレは、ただ、呆然とその場に立ち尽くすしかなかった。

そして、彼女の後ろ姿を見送りながら、こう呟くのが精一杯だった。



















「もう、こんな空しい妄想するの、今年限りにしよう。」







電車が3番ホームに入って来た。
12:17 | MITSUI | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
ドッペルゲンガー(MITSUI) | top | YUASAの「愛機」たち 2

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