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Mon.

ドッペルゲンガー(MITSUI)

今回は、私(Drums MITSUI)が大学時代に体験した、ある摩訶不思議なお話をお聞かせしよう。
皆さんには、到底信じられない話かもしれない。
しかしこれは、当時の私が体験した、紛れも無い真実の物語なのである。





大学2年の夏、私は車を購入した。
バイトで貯めた金と、少しだけ親の助けを借りて、国産の5年落ちの中古を買った。
中古とはいえ、生まれて初めて手にした自分の車に私は夢中だった。

屋根には、サーフキャリーを付けた。
その当時、世の中は、まさに一大サーフィンブームの真只中。
男どもは、皆、真っ黒に日焼けした顔に、フレアーのリーバイスとボルトのサンダル。ド派手なプリントTシャツの首元にはプカシェルを巻いていた。

女の子も、サーファー系のファッションが多く、ファラフォーセット・メジャース風のウルフカットに、ニュートラかハマトラでキメてる子が大半だった。
街中にもキャンパスにも、そんな連中で溢れかえっていた時代だった。

もちろん、当時から超ミーハーだった私も、ご多分に洩れず流行りのスタイルに身を包み、その日も、ボードのないサーフキャリーだけの車を駆り、颯爽と海に向かって飛ばしていた。
カーステレオからは、「イーグルス」や「ドゥービーブラザーズ」などのカリフォルニアミュージックが軽快に流れ、助手席には、付き合いはじめたばかりの彼女が、曲に合わせてリズムをとりながら、流れる景色に目をやっていた。

エアコンのない車だったが、いつもの様に窓を全開にすると、吹き込んでくる初夏の風が心地よかった。
その時、前方の信号が赤に変わり、私は、ユックリとブレーキに足をかけた。
停止線付近に停まると、隣車線に1台の車が滑り込む様に、私の車の右横を通り越し、少し前方に停車した。

私:「おおっ、すげえ、ワーゲンカブリオレじゃん!」

これもまた、その当時大流行したフォルクスワーゲンだった。しかも真っ赤なカブリオレタイプ。
斜め後ろからしか確認できないが、運転席には、いかにも金持ちを気取った出で立ちの野郎がハンドルを握り、助手席には、ロングヘアーをなびかせた、これまたいかにもイイ女風の彼女が乗っている。

私:「クソッ、どこのオボッチャンだ、この野郎は。」

その時私は、無性にこのボンタレ男の顔と、連れてるオネエチャンの顔を確かめてやりたくなった。
確かに、後ろ姿はカッコイイ。しかし、ひょっとして前から見たら、

『テメエラ、その面でオープンに乗るんじゃねえヨ!』

ってレベルの二人連れかもしれない。
そんな嫉妬心丸出しの期待を胸に、私は、ユックリと車を前進させると、ワーゲンの真横に着けた。
相手は左ハンドルだから、すぐ横に相手の顏が見えるはず。
私は、何気無さを装いながら、そっと顏を横に向けた。





次の瞬間、私は、あまりの衝撃に身体が凍り付いた。
しかしそれでも、この状況を何とか助手席の彼女に伝えようと、精一杯声を絞り出した。

私:「オッ、オッ、オイ、ちょっ、ちょっと。」

彼女が、怪訝そうな顔付きで私の方を見た。

彼女:「エッ? ナニ? どうしたの?」

私:「とっ、とっ、となり。」

彼女:「ええー、どうしたのよいったい。」

私:「だっ、だから、とっ、となりだって。」

彼女:「なによ、となり? となりって?」

私:「いいから、となりを見てみろよ。」

彼女:「隣って、隣の車のこと? 隣の車に何があるって言う・・・・・・・・・。」

彼女も言葉を失い、一瞬で身動きがとれない状態となった。
ワーゲンの男が、こちらをジット見つめていた。





彼は私だった。

どこからどう見ても彼は私だった。

『良く似ている』とか『そっくりだ』とか『瓜二つ』などと言う陳腐な表現ではとても片付けられない。
そこにいるのは、まさしく私そのものだった。

私は、その男と目を合わせたまま、身動きひとつとれずにいた。
周りの空気が止まり、信号が青に変わっていたのも気が付いていないほどだ。

すると男が、「ニヤッ」っと口元に笑みを浮かべた。
そして、私に軽く手を振ったかと思うと、車をスタートさせ、足早に走り去っていった。

私と彼女は、ワーゲンの後ろ姿をただ呆然と見送るのが精一杯だった。





ププププーーーー!

後続のクラクションに我を取り戻した私は、慌てて車を発進させた。
暫く車を走らせ、少し気分が落ち着いてきた私は、そっと彼女に聞いてみた。

私:「なあ、いっ、今の、オレ、だったよなあ?」

彼女:「ウッ、ウン、MITSUI君だった・・・・・様な。」

私:「じゃっ、じゃあ、ここにいるオレは、だれなんだよ?」

彼女:「わっ、わかんないけどー、みっ、MITSUI君じゃないの。」

私:「そっか、ハハッ、オレだよな、やっぱ。じゃあ、さっきの奴は?」

彼女:「さっ、さっきのも、MITSUI君・・・だったよね。」





狐につままれた気分のままデートを早々に終えると、彼女を家まで送り届け、私は、一人家路についた。

しかし、気になるのは、これが、たんに『自分に似てる奴を見た』と言うだけの問題では片付けられないと言う事である。
男は、確かに、意味深げな顔付で私を見つめていた。
しかも、去り際には、明らかに不適な笑みを浮かべながら、手まで振ったではないか。

『ドッペルゲンガー』

果たしてそんな者が、本当にこの世に存在すると言うのであろうか。
しかし、もしもあの男がもう一人の自分だとしたら、いったい何を目的にこの世に現れたのか。
私本人が、クーラーも付いていないオンボロの中古車に乗っていると言うのに、どうしてもう一人の自分は、カッチョイイ車にスンゲエいい女を乗せて走っているのであろうか。
私は、何か納得できない苛立ちを胸に、家路を急ぎ、アクセルを踏み込んだ。





それから数日が経ったある日の事だった。
私が学校から帰ると、母親が、私を待ち構えていたかの様に、イキナリ妙な事を尋ねてきた。

母:「おかえんなさい。おそかったわね。アンタいったい何やってたの、あんな所で。」

私:「ハア? あんな所って、なんだよ?」

母:「なに言ってんの。アンタ、今日、◯◯大学の寮に行ってたでしょ。」

私:「なに? ◯◯大学? 行ってねえよ。行くわけないじゃん◯◯大学なんて。しかも、そこの寮に何の用があんのよ。」

母:「ウソ言うんじゃないわよ。あたし、さっきテレビで見たんだからね。なんか、その大学の寮にテレビの取材が入ってて、アンタ、そこの寮の友達みんなとインタビュー受けてたじゃないの。」

私:「バッ、バカ言うなって。ホント、オレ行ってねえって。」

母:「だましたってダメよ。親が自分の子を見間違うはずないじゃないの。あれは、確かにアンタだった。声もアンタだったし。」

私は、その時、もう一人の自分が確実にこの世に存在することを確信した。
しかもヤツは、三流大学の私と違って国立大学に通ってる可能性が高い。
どうやらヤツは、全てにおいて、私の遥か上を行っている様だった。

しかし、この不思議な出来事は、それ以来、私の周りで二度と起こることはなかった。
一体彼は、どこの誰だったのか。
そして、彼は今、どこで何をしているのだろうか。
私は、窓を空け、遠い雲を見つめた。





言っとくけど、これ、ホントの話しだからね。
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22:27 | MITSUI | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
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